オルハン・パムク

2006年ノーベル文学賞受賞! 現代トルコ文学の最高峰オルハン・パムク(Orhan Pamuk、1952-)

1952年イスタンブール生まれ。3年間のニューヨーク滞在を除いてイスタンブールに住む。処女作『ジェヴデット氏と息子たち』(1982)でトルコで最も権威のあるオルハン・ケマル小説賞を受賞。以後、『静かな家』(1983)、『白い城』(1985)、『黒い本』(1990、邦訳藤原書店近刊)、『新しい人生』(1994)等の話題作を発表し、国内外で高い評価を獲得する。1998年刊の『わたしの名は紅』は、国際IMPACダブリン文学賞、フランスの最優秀海外文学賞、イタリアのグリンザーネ・カヴール市外国語文学賞等を受賞、世界32カ国で版権が取得され、すでに23カ国で出版された。
2002年刊の『雪』は「911」事件後のイスラームをめぐる状況を予見した作品として世界的ベストセラーとなっている。また、自身の記憶と歴史とを折り合わせて描いた2003年刊『イスタンブール』は都市論としても文学作品としても高い評価を得ている。
2006年度ノーベル文学賞受賞。ノーベル文学賞としては何十年ぶりかという感動を呼んだ受賞講演は『父のトランク』として刊行されている。

“東”と”西”が接する都市イスタンブールに生まれ、3年間のニューヨーク滞在を除いて、現在もその地に住み続ける。
異文明の接触の只中でおきる軋みに耳を澄まし、喪失の過程に目を凝らすその作品は、複数の異質な声を響かせることで、エキゾティシズムを注意深く排しつつ、ある文化、ある時代、ある都市への淡いノスタルジーを湛えた独特の世界を生み出している。作品は世界各国語に翻訳されベストセラーとなっているが、2005年には、トルコ国内でタブーとされている「アルメニア人問題」に触れたことで、国家侮辱罪に問われ、トルコのEU加盟問題への影響が話題となった。
2006年、トルコの作家として初のノーベル文学賞を受賞。受賞理由は「生まれ故郷の街に漂う憂いを帯びた魂を追い求めた末、文化の衝突と交錯を表現するための新たな境地を見いだした」とされている。