しかし本書は今までの「出雲本」とは趣が異なる。全国にある出雲という地名や神社を一つ一つ訪ね歩き、それぞれの土地の資料を読み、出雲族の足跡を調べ上げている。その地域は筑前から越前、能登、信濃、播磨、朝鮮半島にまで広がり、古代から近代まで出雲がこの国にどれだけ根を張っていたかが見えてくる。質の高い出雲文化史にもなっている。
……この列島と出雲の関係はもっと濃密なものだったに違いない。そういった意味でも、出雲の歴史を掘り起こすことは重要ではないか。本書を読んで、そんなことを思った。
佐藤洋二郎(作家)氏評