書評・紹介

決定版〉正伝 後藤新平 全8分冊/ 別巻1

7/11 毎日新聞 「今週の本棚・この人この3冊」【堤春恵氏】

■後藤新平

 『正伝後藤新平』は伝記編纂会が集めた資料をもとに、後藤の娘愛子の夫鶴見祐輔が昭和8年から3年をかけて執筆した。豊富に引用された資料とその隙間を埋める詳細な記述によって描き出された大パノラマである。しかしこの伝記が書かれた時代と現代の間で、国際社会における日本のあり方は再び激しく変化した。昭和初期の視点から描かれたパノラマは現代の読者にはいささか古めかしく、その記述から浮かび上がる後藤の姿が、古いニュース映画の中の人物のような感じを与えるのも確かである。『時代の先覚者 後藤新平』はパノラマの一つ一つの場面に現代から光を当てる。複数の執筆者による評伝であるため後藤の生涯を辿るという形を取ってはいないが、現代の研究者が資料の中から掘り起した政治家後藤のイメージが、孫、鶴見和子、鶴見俊輔が語る記憶の中の祖父の肖像に肉付けされて行間から立ち上がる。

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