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政治・社会

最後の転落
ソ連崩壊のシナリオ

商品の詳細

最後の転落

  • エマニュエル・トッド
  • 石崎晴己監訳 石崎晴己・中野茂訳
  • 四六上製 496ページ
    ISBN-13: 9784894348943
    刊行日: 2013/01
  • 定価: 3,456円

預言者トッドの出世作!

ソ連の崩壊、アメリカの金融破綻を預言したE・トッドの処女作の完訳!
'76年弱冠25歳にしてソ連の崩壊を、乳児死亡率の異常な増加に着目し、歴史人口学の手法を駆使して預言した書。本書は、'90年、ソ連崩壊1年前に新しく序文を附し、新版として刊行された書の完訳である。“なぜ、ソ連は崩壊したのか”という分析シナリオが明確に示されている名著の日本語訳決定版!

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目次

 日本の読者へ〈インタビュー〉  (聞き手)I・フランドロワ
 フランス語新版への序(1990)

序 説 方法の問題 ――閉ざされた社会の研究
第1部 社会的自動進行過程
 第1章 長期的に見たスターリニズムの本質
 第2章 プロレタリアート独裁下のプロレタリアート
 第3章 ソヴィエト経済の成長の停止
 第4章 衛星国のテイクオフ
 第5章 やはり資本主義の勝利

第2部 選択と心性
 第6章 明晰だがファシスト的な支配階級
 第7章 大衆の絶望と逸脱
 第8章 抑圧システムの適用とその危機
 第9章 内では現状墨守、外には軍事的拡張
 第10章 改革か解体か
 第11章 西側の態度

■〈新版〉への付録
 1 ソ連、その現在の危機 ――死亡率に関する諸現象の分析による記述
 2 ソ連のアフガニスタン侵攻 ――最後の転落か?
 3 批評と解説


図表一覧
解説(石崎晴己)
原注

関連情報

 当時、強大を誇ったソ連の崩壊という、全く考えられなかった事態を予言したこの歴史的な衝撃的著作を書いたとき、トッドは25歳。博士論文を書き終えて、ハンガリー旅行をし、受理の手続きが終了するまでの三カ月間で、これを書いた。
 しかも驚くべきことは、トッドは、ロシア語を知らず、共産圏に足を踏み入れたのは、ハンガリーに小旅行をしただけで、あとは「本物の教養と自由な精神だけを駆使して」ソ連とその帝国を分析したのである。
 トッドの「方法」の真骨頂は、「歴史の段階」といった幻覚に惑わされることなく、17世紀のイングランドやフランス、そして古代インドと、ソ連の「現在」とを屈託なく並べてしまうその自在さである。これは、コルホーズ(集団農場)を、カロリング期の荘園と同じ構造のものとする(従って、コルホーズ員は、狭小な農奴保有地で生計を維持しつつ、領主保留地で労働させられた農奴、ということになる)卓見とも、共通している。
 ソ連崩壊の15年前にソ連の外側から一人のフランス青年の闊達自在な目によってなされた観察と分析が、現実のソ連崩壊のシナリオまでも的確に描き出していることこそ、本書の最も驚嘆すべき点であろう。つまり、外側から若き歴史学者の目が見たものは、完璧にソ連およびその帝国の実像・実態にほかならなかった、と思えるのである。
(解説より)


 本書は1976年に初めて刊行されたが、1990年になると、歴史の変遷によって正しさが確証された中期的予言の例と受け止められるようになった。ソ連圏の解体のプロセスが、大筋において、この本が15年前に提示したモデルに合致しているからである。そのモデルは、いくつかの命題に要約することができる。
 ―― ソ連経済は1975年前後にゼロ成長の段階に達した。そこで市民の生活水準の退行が始まるが、その最初の兆候は、軍事的拡大によって覆い隠されることになる。
 ―― それと同時進行的に、西側諸国は華々しい経済成長を遂げ、ソヴィエト・システムにとって、逆立ちしても追いつけない競争相手となって行く。
 ―― ノメンクラトゥーラは、共産圏への西側社会モデルの浸透に独特の役割を果たすようになる。
 ―― ソ連の新階級(ノメンクラトゥーラ)は、全面的中央集権化の失敗を認め、経済と社会の改革を進めなければ爆発が起こる、というところに追い込まれる。
 ―― 共産主義システムの改革が行われるが、それは帝政ロシアが築いた中央集権体制の土台を破壊し、ソ連邦の周辺部諸共和国が持っていた遠心的傾向を解き放つことにしかならない。
(「フランス語新版への序」より)